第一章 Aの正体

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「私は正真正銘の作家。 笹川彼方です。 それ以下でもそれ以上でもない。 以後お見知りおきを」 〈先生、もしかしてこれって決め台詞ですか?〉 「え……駄目? 私コレ、結構好きなんだけど」 〈まぁ、いいですけど……意外と主人公に分析能力があったんですね。 ただ、男の腕の筋肉が綺麗だったっていう理由で新撰組だと当てるとは。 主人公……言ってることは良いのに、心の中ただの変態じゃないですか?〉 笹川は苦笑いしながら「悪かったね、変態で」と悪態をつく。 電話の相手は勿論、担当の佐々木だ。 〈あの状況で、土方の声で萌えるとか、変態ですよ。 主人公として良いのか……難しいですよ〉 「あぁ……いいの!」 佐々木はその主人公が笹川自身だとは全く気付かずに話しを進める。 無意識に毒を吐く。 これはもはや佐々木の得意技だ。 〈そういえば、先生。主人公は新撰組に上手く取り入るんじゃなかったんですか? 完璧に真っ正面から突っ込んでますよ。 死亡フラグ立ってますよね?〉 ……仕方ないじゃないか!パソコンは私の命なんだよっ! 「……それより……これからどうしたらいいか! 何か事件起こそうと思ってんだけど……あ、ちっちゃいやつね」 佐々木は電話の向こう側で、考えているらしく、うーんと唸っている。 笹川は、パンをもしゃもしゃ食べながら足首の手当てをしていた。 〈今の内にさらっと接触しといて欲しいんです。奴に〉 ほう……と、言ってニタリと笑う。 〈でも、さらっとです。 読者に考えてもらいたいですから。 まぁ、あとは新撰組と仲良くしといてください。 最終的に、死なないように段取りしとかないと〉 「了解。次の締め切りまで頑張ります」 笹川は電話を切るとベッドに身体を埋めた。 (……あぁ、だるい) 熱が出ているのか、頭の痛さに堪えながら笹川は、意識がふっと消えたのを感じた。
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