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目が覚めると目の前には、あの男がいた。
笹川はむくりと起き上がり、その男の手掴むとぺちぺち叩く。ぼんやりした目で男の手をじっと見つめている。
(この筋肉は……)
「変態……?」
笹川の愛するパソコンに触ろうとした、不届き者の男の手であることには間違いない。しかし笹川は、寝ぼけている為か、頭が正常に
働いていないのだ。
男の手をぺちぺちと叩いて、笹川はぼんやり思った。
(この人の手、冷たいから、暖めてあげよう)
男の手を両手で掴む。笹川は自分が子供体温でいつも暖かいことを知っていた。
そんな寝ぼけた男装した女が、男の手をひたすら叩くというカオスな中、正常な思考の男が一人。
「…何をしてる」
笹川のパソコンを触ろうとして、殺す発言をされ、現在進行形で手を叩かれている張本人、もとい不届き男である。
「……?」
(なんだ、こいつ。何の為にこんなことを……)
笹川は再びめまいに襲われたようで、力なく背中から布団に倒れる。
「熱がある。起き上がるな」
男は笹川の額に濡れた手ぬぐいをおいて、布団をしっかりとかけ直す。
その言葉にようやく、この状況を理解しようと笹川の頭が働いた。
「ありがとうございます。
あの、私は一体……?」
男から、これまでの経緯を聞くとどうやら土方と話をしているときに、緊張からか興奮していたからかなんなのか、熱を出して気絶したらしい。
その後、沖田の部屋に運び、土方命令でこの男が看病してくれたようだ。
(……笑ったまま、倒れたとか。
しかも、ひじりん(土方)に酷いことを言ったような……?
……絶対、死亡フラグ立ってるよ!)
熱に浮かされていたせいだろうか。
笹川は自分の記憶がほとんどないことにうなだれ、焦りを感じた。
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