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死亡フラグを立て、佐々木に心を折られてから約一週間がたった。
「咲、早くして」
「え、はい、きゃぁっ!」
「ああぁぁ!何してんの!怪我はないっ?」
今現在、咲と笹川の二人で夕餉準備中。
咲は今、13歳で、どうやら今まで家事をしたことがなかったらしい。
とても料理なんて出来ない為、米を研がせたり、汁物を掻き交ぜたり、野菜を洗わせたりと比較的危なくないことをさせているのだが……
「ごめんなさいっ」
(米を全てこぼすとは……)
「あぁ、いいよ。大丈夫、大丈夫。
こっちの汁物、沸騰するまで見てて」
笹川はニッコリ笑って言うと米を拾い始める。
咲は顔を青くしながら汁物を見つめていた。
今のところ、笹川に怪しい気配はなく、咲に熱心に物事を教えている様子だ。
ちなみに、つい先日、笹川が女だと咲にばれた。といっても、笹川は隠していた訳ではない。
咲にはショックだったようで、暫くぎこちない接し仕方をしていた。今では、毎日の忙しさにそんなことを考える暇がないようだが。
そんな日の夜だ。
「土方さん、明日、休み貰って良いですか?」
笹川が土方の部屋を訪れた。
心臓がドクドクと鳴るのを抑えながら、面倒くさそうに用件を伝える。
「何の為に」
「どうせ後付けるんでしょう。
なら別に言わなくても良いですよね」
「何処に行く」
「決めてません」
なんという適当さ。
土方に恐怖心を抱いているが、それよりなにより受け答えが面倒なのだった。
土方は笹川の態度に眉間に深く皴を寄せて、ため息を吐き出した。
「……勝手にしやがれ」
「有難うごさいます。土方殿……じゃなくて土方副長」
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