第三章 節穴

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「すいません!これください!」 「はい、ただ今」 「えっ、さ、笹川さんっ!?」 お勘定しながら咲が何か言っているのを無視して、お金の説明を始めた。 咲には生きる術を教えなければならないので、今日のは社会見学と言っても過言ではない。 ついでに、咲に必要な物を揃える――まさに一石二鳥だ。 「咲、ちょっと外で待ってて」 そう言って、咲が外に行くのを確認しながら、笹川は店の者に声をかけた。 「すみません、少々お聞きしたいのですが、――を知りませんか?」 「?よう分かりませんな」 笹川は愛想よい笑顔を向けて礼を言うと、着物の袋を持って咲の所へ向かった。 山崎は、商人のフリをして笹川と咲を追っていた。 今は店先で咲が笹川を待っているのをさりげなく見ている。 この光景を見るのは今日でもう三回目だ。 女子の買物は長い……と、山崎は何度目かのため息を吐き出す。 その時、咲が男に囲まれたのが見えた。 咲は男に腕を捕まれて、顔を青くさせている。 男がニタリと笑うのが見えて、山崎は舌打ちをした。 「おい、笹川、何でこんな時来ないんや……」 (咲のこと守る言うたやん。山南さんに啖呵切っとったやん……!) 咲の泣きそうな顔に、山崎が思わず飛び出そうとした――瞬間。 「お咲、待たせた。あれ、そちらさんは……」 笹川が店からにこやかに出てきて、山崎は固まった。 「どうされました?私の妻に何かご用ですか?」 ――色男さん。 そう言って、にっこりと笑い、笹川は男達を見上げた。 その顔を見て男達と山崎は顔を引き攣らせる。 咲は笹川よりも背が小さい為見えなかったが、何かまがまがしいオーラを感じて体を強張らせる。
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