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「すいません!これください!」
「はい、ただ今」
「えっ、さ、笹川さんっ!?」
お勘定しながら咲が何か言っているのを無視して、お金の説明を始めた。
咲には生きる術を教えなければならないので、今日のは社会見学と言っても過言ではない。
ついでに、咲に必要な物を揃える――まさに一石二鳥だ。
「咲、ちょっと外で待ってて」
そう言って、咲が外に行くのを確認しながら、笹川は店の者に声をかけた。
「すみません、少々お聞きしたいのですが、――を知りませんか?」
「?よう分かりませんな」
笹川は愛想よい笑顔を向けて礼を言うと、着物の袋を持って咲の所へ向かった。
山崎は、商人のフリをして笹川と咲を追っていた。
今は店先で咲が笹川を待っているのをさりげなく見ている。
この光景を見るのは今日でもう三回目だ。
女子の買物は長い……と、山崎は何度目かのため息を吐き出す。
その時、咲が男に囲まれたのが見えた。
咲は男に腕を捕まれて、顔を青くさせている。
男がニタリと笑うのが見えて、山崎は舌打ちをした。
「おい、笹川、何でこんな時来ないんや……」
(咲のこと守る言うたやん。山南さんに啖呵切っとったやん……!)
咲の泣きそうな顔に、山崎が思わず飛び出そうとした――瞬間。
「お咲、待たせた。あれ、そちらさんは……」
笹川が店からにこやかに出てきて、山崎は固まった。
「どうされました?私の妻に何かご用ですか?」
――色男さん。
そう言って、にっこりと笑い、笹川は男達を見上げた。
その顔を見て男達と山崎は顔を引き攣らせる。
咲は笹川よりも背が小さい為見えなかったが、何かまがまがしいオーラを感じて体を強張らせる。
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