第三章 節穴

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それからまた一週間程たって、笹川は咲の異変に気付いていた。 「また、火傷したのかっ!これ、ちゃんと冷やさなかったろ! 水ぶくれになってんじゃん」 笹川が咲に向かって声を上げて怒っている。 ここ最近はずっとこんな感じだ。 笹川は咲が心配で怒る一方で、何か変だと思っていた。 (私が一緒の時には全然、怪我なんてしないのに……) そう、何かがおかしい。 料理をすれば指を切る、火傷をする、転んで何かしら傷を作る。 掃除をすれば、水を被る。 日常では、転ぶ、縁側から落ちる、何故か生傷が多い。 それも、笹川がいない時だけだ。 笹川は咲の腕を水に付けながら、今日も思案していた。 もしかして、タイムスリップの条件が私と同じなのだろうか。 笹川の場合は、幕末の身体と現代の身体を一つの魂が行き来している。 そして、片方の身体に傷が付けば、もう片方にも移る。 今まで、未来人に会ったことがない笹川は、どういう勝手でこの時空が出来ているのか、条件は全ての人に等しいのかが分からない。 故に、どうするべきか悩んでいた。 「お咲。 もしかして、この傷は誰かに付けられてる……?」 「え……」 咲はそんな訳ないじゃないですかと笑うが、少し目が泳いだように見えた。 「本当に?」 「……本当です」 何でもいいから、手遅れになる前に―― 「分かった。 言いたくないなら聞かない。 でも、何かあったら言えよ。 じゃないと、助けられないから」 突き放すようにそういうと、咲の手に濡れた手ぬぐいを巻き付ける。 咲が小さくお礼を言うと、笹川は掃除をしに厨を出て行った。
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