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それからまた一週間程たって、笹川は咲の異変に気付いていた。
「また、火傷したのかっ!これ、ちゃんと冷やさなかったろ!
水ぶくれになってんじゃん」
笹川が咲に向かって声を上げて怒っている。
ここ最近はずっとこんな感じだ。
笹川は咲が心配で怒る一方で、何か変だと思っていた。
(私が一緒の時には全然、怪我なんてしないのに……)
そう、何かがおかしい。
料理をすれば指を切る、火傷をする、転んで何かしら傷を作る。
掃除をすれば、水を被る。
日常では、転ぶ、縁側から落ちる、何故か生傷が多い。
それも、笹川がいない時だけだ。
笹川は咲の腕を水に付けながら、今日も思案していた。
もしかして、タイムスリップの条件が私と同じなのだろうか。
笹川の場合は、幕末の身体と現代の身体を一つの魂が行き来している。
そして、片方の身体に傷が付けば、もう片方にも移る。
今まで、未来人に会ったことがない笹川は、どういう勝手でこの時空が出来ているのか、条件は全ての人に等しいのかが分からない。
故に、どうするべきか悩んでいた。
「お咲。
もしかして、この傷は誰かに付けられてる……?」
「え……」
咲はそんな訳ないじゃないですかと笑うが、少し目が泳いだように見えた。
「本当に?」
「……本当です」
何でもいいから、手遅れになる前に――
「分かった。
言いたくないなら聞かない。
でも、何かあったら言えよ。
じゃないと、助けられないから」
突き放すようにそういうと、咲の手に濡れた手ぬぐいを巻き付ける。
咲が小さくお礼を言うと、笹川は掃除をしに厨を出て行った。
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