壱章

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山の奥に、廃屋と見紛う程に寂れた一軒の家屋があった。 他に家はなく、たった2人がひっそりと生活している。 「……桜太、そんなに早く走らないで。私は早く動けない」 そう言いながら、小さな赤い髪をした弟に笑いかけるのは、年の頃16歳くらいの黒く重たげな髪をした姉であり母の代わりをする紅姫と言う少女だ。 紅姫が身を動かす度に関節がキシキシと音をたてる。 「紅ねぇ様、おいらはそんなに早くねぇぞ?早く、弥七じぃ様のお墓に花を供えよーよ」 跳び跳ねるように、紅姫の周りをくるくると廻りながら桜太は、ニコニコと笑いはしゃいでいる。 ,
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