壱章

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桜太の話せる相手は紅姫だけだった。 これから墓参りに行く弥七じい様という紅姫が大切に思う人物の事も桜太は知らない。 紅姫が、時おり語り聞かせる話の中で出てくる優しいお祖父様という事しか分からない。 桜太の世界は、とても狭く閉鎖的だった。 紅姫は、意図的に山に閉じ込め隔離するように育て、また桜太に山をおりようと思わせないように教え込んでいる。 人形である紅姫は、思考が人間程に複雑ではなく至極単純なせいか桜太も疑問を抱く事もない。 彼らの判断基準は、白か黒かしかない。 ,
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