壱ノ刻 巫女とメイドと吸血鬼

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今更だが彼の名前は伊吹 優希。 別に鬼とは関係ない。 ちなみに今年で高校三年生である。 両親は優希が中学二年の時に交通事故で亡くなった。今は莫大な遺産のおかげで生活している。 家も結構な人数住めるようになっていて、下宿所できるくらい広い。 そんな事を考えながら、キッチンに向かった。途中、横切るリビングの窓から月が見える。 綺麗な満月だ。 「月が紅いなぁ…レミリアが喜びそうだ。」 窓から見た景色の感想をつぶやく。すると、クスリと笑った声の後に少し覇気のある甘い声がした。 「ふふ、満月なんかで私は喜んだりしないわよ。」 声の主はキッチンで椅子に座り、紅茶を飲んでいた。 「レミリア…スカーレット?」 「私の事、本当に知っているのね。」 レミリアは笑いながら紅茶を啜った。その後ろには十六夜 咲夜が立っている。 これは夢なのだろうか。いや、違う。 夢ならとっくの昔に覚めている。さっき昼寝したから。 それにこの空間の雰囲気から現実だと分からせられる。念の為、頬を抓った。 痛い。 「なら、話は早い。しばらく私達を置いてくれないかしら。」 「それは構わないけど…。」 「けど?」 「君らが本当に"レミリア=スカーレット"と"十六夜 咲夜"なのか証明してほしい。」 レミリアはそれを聞くと、面倒臭そうにため息を吐いた。 「用心深いのね。」 「コッチじゃ、そういう服もあるんでな。」 ここでレミリアはある言葉遊びを思いついた。それを質問に答えるように話す。 「そういう事なら…"浮けば"良いかしら?」 優希はある違和感を覚えた。何故か"浮けば"の言葉だけ発音が変わったのだ。 「…なるほど。分かった、認めるよ。」 「証明しろって言ったり、いいって言ったり面倒臭い奴ね。」 「だって、嘘ならそんな軽々しく"浮く"なんて言えないだろ?」
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