壱ノ刻 巫女とメイドと吸血鬼

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「じゃあ私が"飛ぶ"って言ったら?」 「飛ばせた。」 「弾幕なら?」 「撃たせた。」 優希がそう答えると、レミリアは笑みを浮かべた。おそらくはこの言葉遊びに気が付いたか、ヒントに感づいているか。 「面白い人間。霊夢がここを指定した意味が今分かったわ。」 「指定?霊夢が?」 「ええ。霊夢が『この男の家に行け』って言うからね。」 「そうか。霊夢が…。」 そう聞いた後にある事が引っかかった。疑問に思った優希はレミリアに聞く。 「ん?ちょい待ち。今更ながら、なんで二人が外の世界にいる?」 「それは私が説明しますわ。」 今まで黙っていた咲夜が優希の前にコーヒーを入れたカップを置いた。 「どうも。」 「いえ。道具は勝手に使わせて頂きましたから。」 早速コーヒーを一口飲み込む。インスタントとは思えない味だ。 「では、本題に…。」 「あー、ちょいタンマ。俺に敬語使わなくていいよ。落ち着かないし。」 「そう…分かったわ。じゃあ、本題に入るわね。」 「はい。」 咲夜は一拍置くと、話し出した。落ち着いた、ゆっくりとした口調で。 「幻想郷の結界の基礎を作ったのは誰か分かるわね。」 「八雲 紫だろ?」 「そう。その八雲 紫が体調を崩したらしいのよ。」 「紫が?」 「ええ、それによって博麗大結界が不安定になったの。」 「不安定?でもそれだけじゃこっちに来る訳じゃないよな。無縁塚にでも行ってたのか?」 咲夜は首を振った。 「結界にも破損があったのよ。お嬢様と私はその結界の破損部に引っかかって、外の世界に来てしまったと言うとこかしらね。」 ちょうど話し終えた途端にレミリアが空のカップを置いた。 「霊夢だけじゃ博麗大結界の維持でいっぱいいっぱいなんだろうな。」 「そうね。腐ってても博麗の巫女だし、維持"は"できるでしょうけど。」 新しい紅茶の香りを嗅ぎながら、レミリアは皮肉る。その時、優希はある事に気づいた。
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