5人が本棚に入れています
本棚に追加
幼い頃、私は学校で、孤立していた。
そして、学校の児童だけに避けられたのではなかった。
父母や先生にまでも、『神崎家の、お嬢様』という肩書きだけで怯えられ、周りの親は子供にまでも、
「仲良くしては、駄目。」
と避けるように、言い聞かしていた。
家にも、私の居場所は無かった。
勉強の成績が下がると手を挙げられ、習い事でも、何か少し失敗しただけでも、手を挙げられた。
いつも…、一番じゃないと、駄目だった。
どんなに努力しても、結果が全て―。
そんな環境に、誰もが、見てみぬふりをしていた。
寂しかった…。
ただ、ただ…、寂しかったんだ。
そして私は、『妖かし森』に行った。
妖かし森に、妖かしがいる事は、知っていた。
「妖かし森に行っては、行けない。」
と聞きあきるほど、母や祖母に言い聞かされていたから。
でも家には、居たくなかった。
あんな、窮屈で息苦しい家。
どこにも行く場所が無い私は、ほんの少しの好奇心で、妖かし森へ行った。
もちろん、家の人には内緒で…。
私が、妖かし森に初めて入ったのはこの、まだ肌寒い春のことだった。
午後2時。
まだお昼なのに、森のなかは暗く、風がひんやりと肌寒い。
“ポキッ、ザザッ”
森の奥に、一歩踏み出す度、草が揺れる音や、枝が折れる音が響く。
『う゛っ』
急に、まぶしい光が差した。
あまりのまぶしいさに、目を瞑ってしまって、目の前が見えない。
少しずつ目を開けると、目の前には草原と湖。
森から、抜けたみたい…。
ここ、どこ…?
さっきまで、暗い森のなかだったのに…
綺麗な湖…。波打つ度にできる、光の波が綺麗。
森のなかに居たのが、嘘みたい。
『?』
草原の一ヵ所だけ、草花が生えていない地面のところがある。
何だろう?
地面のところに行くと、
『こ…ん、にち…は?』
私と同じような小さい子が、木の棒で書かいた、綺麗とはあまりいえない字。
最初のコメントを投稿しよう!