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3月20日
青い空、まだ冷たい空気、そして―――
「あっ…」
私は自転車を慌てて止めた。
見上げた先には小さな蕾。
「春だなぁ」
この辺りで一番大きな桜の木の前で、春に高校2年になる私は小さく呟いた。
あとどれくらいだろう、桜が満開になるのは。
「………?」
フッと脳に満開の桜のイメージが浮かんだ。
何、今の………?
どのくらいそこに立っていただろう、気がつくと私は友達との約束の時間を忘れて、桜の木を見上げていた。
ヒューッと冷たい風が吹いて、私はハッとした。
時計を見ると、約束の時間をとっくに過ぎていた。
「うわ~」
来た時と同じように慌てて自転車に跨りペダルを踏む。
まだ予想もしていなかった今の私にとっての未来に向かって。
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