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私は痛む頭を抑えて、一つ息を吐いた
伊藤は、2週間もしない内に動きを始めたのだ
初めは、コソコソとしていた行動は大胆になっていった
平助を始めに隊士たちを集め
〔勉強会〕と称し、部屋に呼んでいた
ぽつん、と手に水が当たる
上を見上げれば
小さい雫が何個も何個も落ちてくる
何故だろうか
喇美は、ソレが[雨]だということを理解するのに時間がかかった
「おい」
上を見上げるのをやめ、声のするほうに顔を向けてみれば、もうその時には視界は真っ暗だった
喇美「…え?」
冷えていた喇美の身体を
ゆっくりと、でも確実に温めてくれている
喇美「ちょ、土方さん」
少しだけ、この温もりに癒されたくなったが、喇美は慌てて暴れだす
土方「喇美…」
名前を呼ばれてしまえば
私は暴れることを止めた
だって
あまりにも私を呼ぶ土方さんの声が、悲しそうだったから…
土方「何処にも、行くな…よ」
ぽつ、ぽつ、と繋がれた言葉
やはり声色は悲しそう
喇美「行かないですよ…?」
土方「だって、お前、今光ってた。だから俺、このまま消えちまうんじゃねぇかって」
喇美「え?」
光ってた…?
私が光ってたって…
強くなる腕に優しく自分の腕を重ねる
喇美「居なくなったりしません。貴殿方と居たい。消えろって言われても消えないですよ。だからね、歳?大丈夫だよ。」
土方「…消えろなんて言わねーよ。俺…、俺達も喇美と居てーさ」
はい、と返事をして
暫くの間、抱きしめあっていた
その時には、
伊藤さん、嫌いです。とだけ話すと
俺もだ、あの人とは馬が合わねー、それに、あの化け狐には気をつけねーとな
そう言った土方の言葉に何故か少し、安心した
でも、気付けなかった
この情事を見られてたなんて
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