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さて、先も言ったとおり二月である。
二月といえばバレンタインだ。
もちろん、俺はチョコを貰えない。青春を諦めた俺には関係無い話だ。
しかし、意味が無いかと言うと、そうでもない。バレンタインという特大のイベントは、天気以外に話せる数少ない話題なのだ。
「あとちょっとでバレンタインだな。今年も憂鬱な日がやってきてしまった」
二月の頭、学校の昼休みの教室にて、俺は悪友にそう言った。
それを聞くと悪友は目を丸くして、
「何を言っているんだい」
と言う。
更に、こちらに指を差してくる始末だ。それも両手。
こいつは、人を指差してはいけません。と教わらなかったのだろうか。
俺は教わった。俺は教養のある人間なのだ。
「何って、愚痴に決まってるだろう」
だからこそ俺も両手で悪友を指差す。
悪いと分かってるからこそ、指を差せる。
人は痛いと分かっていなければ、人を殴らない。
「愚痴だって? ハン、良く言うよ」
お互いがお互いに両手で指を差すというシュールな状態で、悪友は分かってないなと言う。
「何が分かってないと言うんだ」
こいつの上から目線にムッとして言い返す。
悪友は、やれやれと首を振ると、俺の指先に自分の指先を付けて、一言。
「何って、あなた、チョコ貰えるでしょうに」
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