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男の言う通り、このままぐずぐずしていれば、いつメアリ・アンとやらが現れて、この包丁の餌食となるやも分かりません。
「にっ…逃げねえと!!」
すぐさま辺りを見渡し、最初に男が入ってきた扉へ駆け寄ろうとしますが、
「それは公爵邸の中へ通じるドアです。この屋敷は広いですからね…外へはまず出られないと思いますが?」
男の面白半分といった言葉に、ぴたりと足を止めました。
屋敷の中へ出るのはまずい。メアリ・アンや公爵夫人と出くわしてしまうかもしれません。
「くそっ!どうすりゃ…!」
「何とも頭の悪い。厨房といえば、裏口があるものでしょう。ほら、あちらに」
焦るイーディスを一笑して、男は優雅にキッチンの片隅を指し示しました。
イーディスは勢いよく振り返って、男の示す先を見ます。
「な…っ、なんだありゃ!?」
しかしイーディスはそこで固まってしまいました。
男の指差す先には、木で出来た扉が確かにありました。
───子供のイーディスの膝までも無いような、小さな小さな扉が。
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