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それを聞き(大笑いされていい気はしませんでしたが)、イーディスはひとまず安心しました。どうやら自分は死んだわけでも、地獄に居るわけでもなさそうです。
「ところで、お前は僕の質問に答えていませんね。
お前は公爵夫人のディナーになりに来たのですか?僕の許可もなく、ウサギ穴を通ってまで」
男の問いかけに、しかしイーディスははっとしました。
『誰か』に腕を引かれあの長い穴を落ち、目が覚めたら調理台の上というこの現状。
もしやそのメアリ・アンなる料理女が、今晩のメインディッシュにと自分を連れてきたのかもしれない。これから綺麗に内臓をくり貫かれ、詰め物をされてオーブンでこんがり焼かれてしまうのかも───……
「や、っ……」
イーディスはわなわなと震えました。
愛らしい頬はすっかり青ざめてしまい、そして震える唇で、
「っ、やれるモンならやってみやがれ××××料理女がぁ──っ!!
それともアレか!?ディナーってそっちの意味か変態××ババァが!!この俺が大人しく喰われると思うなよ!てめえの萎びた××××なんぞ噛みちぎって小便ひっかけてやるからなこの×××がぁ───っ!!!」
恐ろしく口汚い罵倒を、声高に叫びました。
「…………」
「ハァー、ハァー……」
力の限り絶叫し肩で息をするイーディスを前に、しばし思考停止していた男もようやく立ち直りました。
「えー………お前は、淑女では、ないのですか?」
なるべく平静を装いながら、今更とも言うべき質問を男はします。
イーディスの方は、しまった!という顔を一瞬見せましたが、すぐに鼻で笑うと答えました。
「喰われるかと思って取り乱しちまったな、俺としたことが…。
そうだよ、俺は男だ。あんたも騙されただろ」
上等なワンピースに身を包み、リボンの髪飾りが良く似合うお人形のようなイーディスは、不敵にニヤリとしてみせました。
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