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「裏口?……こ、これが?」
イーディスはその扉に近づいてみました。
古びた木のドア。錆びた金属のノブと、細長い覗き窓が付いた、きちんとしたドアです。
しかし、まるで猫の通り口のような大きさ。子供のイーディスが四つん這いしても、通れそうにありません。
「なんだよこれ!?なんでこんなに小さいドアが…?」
「メアリ・アンは、ご自分の背が低いのを大変気になさっていると聞きます。
そこから考えるに、つまりこれはドアの気遣いでしょうね」
いつの間にかすぐ後ろに立っていた男の声に驚きながらも、イーディスは訊ねます。
「は、はあ?ドアの気遣い?」
「ええ。こんなに小さなドアの前に立てば、誰だって“自分は大きすぎる”と感じるものでしょう?」
男は扉の前に立ちました。大人の身長を持つ彼は、そのつま先の尖った靴ぐらいしかこの扉を通ることはできないでしょう。
「さっきから何言ってんだ?ドアが気を遣ったりするわけねえだろ!それにこんなちっさいドア、誰が通るって言うんだよ」
「おや、ドアにだって人を気遣う心はありますし、こちらがお願いすれば通してくれますよ。もっとも、お前のような生意気な子供は通してくれないかもしれませんが」
「あんた、ホントに何言って」
空気を切り裂く轟音に、イーディスの言葉は遮られました。
「───ッ!?」
突然のことに息を飲むイーディス。
立ち尽くすイーディスが見たものは───、一部を木っ端微塵にされぽっかり穴が空いたドアと、硝煙立ち上る古風な木のピストル。
そしてそれを構える男は、口元ににっこりと弧を描いて言いました。
「さあ、苗木にまで戻されたくなかったら、どうかここを通してはもらえませんか?」
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