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穴のふちに丸く切り取られた空はぐんぐん小さく遠くなり、ちっぽけな光の点になって見えなくなりました。
後に残るのは暗闇の中、耳を切る空気の音と気持ちの悪い浮遊感。
「────っ!!───────~~っ!!!」
しかし尚も声にならない悲鳴を上げるイーディスの頭は、恐怖でいっぱいです。
──落ちる!落ちる!落ちる!!
どうして落ちているのかどこから落ちたのかどこまで落ちるのか落ちたらどうなるのか──もうずいぶん落ちているから、馬車にひかれたカエルのようにぺしゃんこになってしまうかも──……
うふふ。クスクス。あーははは。
不意に、聞こえてきた無邪気な笑い声に、イーディスは我に返りました。
狭い穴の中に響き渡る、子供のような笑い声。
そしてイーディスは気付きました──自分の腕が、今も『誰か』に掴まれていることに。
思わず空中で振り返るも、真っ暗闇の中ではそこに何が居るのか見分けもつきません。
あるのは、骨まで食い込むように強く、強く掴まれる感触だけ。
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