腕を引かれて

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   一体誰なんだろう。さっきからの笑い声も、この『誰か』のものなんだろうか?  イーディスが目を凝らし、もっと良く見ようと身をよじった、その時。  遠くに──落ち続けるその先に、一点の光が見えました。光はだんだん大きくなり、近づいてきているようです。  ──穴の、出口だ。  そう気付いた途端、イーディスの心は再び恐怖でいっぱいになります。悲鳴が喉元までせり上がり、イーディスはぎゅっと目を瞑りました。  目を閉じていても分かる程に、光はどんどん強くなっていきます。  そして、辺りがひときわ眩しい光に包まれた時──穴の外へ出たのだとイーディスには分かりました──、止まない笑い声の中、イーディスは意識を手放しました。 「ねぇ、ずっト、一緒ニ──……」  最後の最後、そんな声が聞こえた気がしたのは、恐怖のあまりの勘違いだったのかも、しれません。  
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