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どのくらい、経ったのでしょうか。
イーディスが目を覚ますと、そこはキッチンでした。
「……っ!」
イーディスは弾かれたように起き上がり、辺りを見回します。
広めの流しに大きなオーブン。吊り下げてある鍋や調理道具もピカピカ。なかなかに、立派なキッチンです。
そして、思い出したように自分の体を見下ろしました。
どこにも傷や怪我は、ありませんでした。どこも普通に動かせますし、着ている服も、血の跡や破けた所すらありません。
──あんなに落っこちたのに、無傷だなんて。
イーディスは思いました。もしかしたら自分はやはりカエルのようにぺしゃんこになって、もう死んでしまっていて、ここは天国か地獄なのかもしれない、と。
不意に、左腕がズキリとしました。
きっと全身を打ち付けたはずなのに、何故かそこだけが痛みます。
イーディスは袖を捲り上げてみました。
「う、わ……」
すうっと、体温の下がる思いをしました。
二の腕の下の方、肘より少し上の所に、青黒い手形の痣がありました。5本の指の跡までくっきりと残っています。
それは、穴の中『誰か』が掴んでいた所でした。
そう言えば、結局あれは誰だったのでしょうか。キッチンにそれらしき人影は見当たりません。
とその時、ガチャリと音がして、イーディスはキッチンの扉の方を振り返りました。
扉がゆっくりと開き、誰かが入って来るようです。
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