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「ちょっと様子見てきますね」 と葵も生徒会室を出て行った。 どうやら、仕事は片付けていたみたいだ。 植物園 何の目的で作られたのかは不明だが、敷地の端の方にそれはひっそりとあった。 そして春斗が気にっている場所。 なにかあるとすぐここに来る。 誰も知らないはずの秘密の場所。 いつものソファーに座る、 植物以外にはなにもなかったそこに、理事長の許可をもらい 私物を置いている。 ほんのり入る日差しに気持ち良さを感じて、いつもは寝るが 今日はとてもそんな気分にはなれなかった。 ただ少しおかしいと思ってたことはあった。 それは自分に婚約者がいると、伝えられなかったこと。 仮にも、次期後継者の自分にそういう話が来ないのはどうなのか、と 周りの大人たちに散々言われてきた。 そのたびに両親が婚約者の話を断わっていたのだ。 しかし実際はもうすでに生まれたときから決まっていたのだ。 1年という差のわずかな軌跡が起こったときに。 その満月の話も葵から聞いた。 掟のことについてはなんとなく理解はできた。 だからこそ哀れに思って 昨日、取り消しにしても。と提案したのに逆に怒られてしまった。 そして途中でやめたあの続きの言葉は・・・? 「会長、こんなところにいたんですか」 顔を上げると葵がにこやかな笑顔で近づいてきた。 「なんでここにいるとわかった」 「昨日も言ったじゃないですか。あなたのことはよく知ってますから」 「・・・ストーカーだな。」 「えぇ?酷いですね。そこまで依存してませんよ」 「お前・・・葵は、昨日なんて言おうとした?」 「・・・なんのことですか?」 少しとぼけてみる。 無駄なのはわかっているが。 「言いかけただろ。なんて言おうとした」 「会長も結構しつこいですね。」 「悪かったな、しつこくて。」 「今更隠すこともないですかね。昨日は言えませんでしたけど」
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