苦労を越えて

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苦労を越えて

洋さんの次の前世へと、川沿いを歩いてゆきました。 たどり着いた先は、古い木造の家。 本人の姿は古い藍色の着物に股引き、草履ばきになっています。 1782年日本人男性よたさん26才です。 質素な食卓には五平という5才の息子さんしかいません。 私「奥さんはどうされたのですか?」 「死んでしまいました。風邪をこじらせたのです。」 私「一人でお子さんを育てているのですか?」 「はい。」 私「ご両親はいらっしゃいますか?」 「私が16才の時に戦争で死にました。」 この時代に大きな戦争はないですから、地方の小競り合いか、年代が違うのかも知れませんね。 私「今、気になる所、行きたいはありますか?」 「寺に行きたいです。寺にいって、妻の墓に手を合わせたいです。」 何時ものように寺へゆき、墓の前で手を合わせます。 奥さんとは祭りで出会い、よたさんから声をかけたのだそうです。 「ゆっくり休めよ。」 よたさんは優しくそう言いました。 五平くんの意識に繋いでみました。 私「五平君、幸せ?」 「寂しい…お母さんが居ないから…」 お母さんが亡くなったのは、五平君が3歳の時です。 私「お母さんの事を覚えてる?」 「覚えてる。」 私「五平君からみて、よたさんはどんな人ですか?」 「弱々しく見えます。強がっているみたいです。」 誰にも頼れず、自分ひとりで息子さんを育てています。 畑仕事をして、なんとか食べてはいけるようですが、精神的には確かに相当無理をしているようです。 私「何処が辛いですか?」 「何もかもが辛いです。子供がいるから頑張れます。」
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