ⅩⅡ

26/27
前へ
/352ページ
次へ
試合が始まり、私のドキドキも増していく。 久しぶりのバスケの大会の雰囲気に同じように飲み込まれていく。 「わあ。かっこいい。」 華が自然と思いを口にする。 ただのイケメンの二人ではなく、選手としてのかっこよさが際立っていた。 私も正直華と同じことを思っていた。 幸ヶ谷君は私と同じポジション。 だからなのか、そのほかの選手よりも目がいく。 だけど、池ノ内隼人のほうが視界に入る。 あの冷徹と不器用さがバスケになると間逆に。 積極的だし、すごく人間らしさが出ている。 私はバスケを見ながらそういうことを考えていた。 本当は噂どおりの人じゃない。 噂は噂でしかないんだ。 自分がそう目で確認しているようだった。 準決勝は鳳凰が勝利。 私は自分のことのように嬉しく、鳳凰学園の応援席も大盛り上がり。 次は女子の決勝。 私の友達も試合に出ていた。 表面では応援しているけれど、心のどこかでまだバスケに未練がある私はその友達に少し妬みに似た感情があって。 まっすぐにその友達をみれなかった。 次が最後の試合。 男子の決勝。 「次勝ったら優勝だよね?」 「うん。絶対勝ってほしいな。全国大会見に行きたい。」 まだ出場も決まっていないのに、頭の中ではもう優勝している気でいる。 でもそれが現実になることを心から願っていた。 さっきとは違うユニフォーム。 雰囲気がちょっと違うだけでもドキってする。 やっぱり私って。 試合が始まってもドキドキが止まらず、つい声にだしてしまいそうになる。 でも、華には言えない。 あんだけ嫌っていた人を好きになってしまったなんて。 しかもここ数日で。 そんな気持ちの変化を理解できるような華じゃないから。 華の気持ちもあるし、絶対にいえないんだけど、この気持ちは本物だと思う。 シュートを決める池ノ内隼人も親友のために頑張る池ノ内隼人もこの目でみてしまったのだ。 まだどういう人間なのかって全部分かってはいないけれど、そこらのファンの女の子たちより[池ノ内隼人]という人間を知れたことがすごく嬉しかった。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加