ⅩⅡ

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結果は見事優勝。 鳳凰学園の看板にもなるバスケ部だから、応援の数も拍手の数もすごかった。 会場にいる全員がスタンディングオベーションになり、私たちもその流れに乗る。 すると池ノ内隼人と目が合った。 一瞬だけど彼が笑った気がして、その瞬間に私の気持ちは決まった。 私池ノ内隼人のことが好きだ。 今まで遊星を引きずり、恋愛に臆病になっていた私。 新しい恋も私には効かないと思っていたけれど、突然その薬に助けられた。 もうこのときには、頭のなかに遊星はいなかった。 恋っていきなり始まるんだなって驚いた。 華はとなりで、どちらの男の子のために拍手しているのか分からない。 池ノ内隼人のことがまだ好きなのは見て分かる。 けれど、最近の幸ヶ谷君の努力とバスケの実力がどこまで華に影響があったのかが今のところ分からない。 帰り道もバスケの話ばかり。 試合内容のことじゃなく、あの男の子二人の話題。 華もテンションがあがって、私に久しく振っていない池ノ内隼人の話をする。 私もそれに続けて話をする。 もう明日かもしれない遊びの約束。 それが楽しみすぎてたまらなかった。 普通に4人で遊ぶのもいいのかもしれない。 でも、事前に私の中でできていたシナリオは、今の私の気持ちでは望めなくなっていた。 華、あなたを恋敵にしたくなかったけれど、こうなったら戦うしかないよね。 隣で楽しそうに話す幼馴染。 私は申し訳ない気持ちと負けたくない気持ちでいっぱいだった。 可愛さじゃ完璧に負けている。 どこが華に勝っているのかって聞かれたら答えられないけれど、現段階でいえることは私は池ノ内隼人と接点があるということくらい。 でもこれは心強い武器になるのかもって思った。 華と戦うにはまず、華に自分の気持ちを気づかせることが先決かな。 じゃないと試合になんないし。 私は帰りながらシナリオを考えた。 池ノ内隼人はどんなことでも親友の幸ヶ谷君のために動くであろう。 だからそれを利用して華に気持ちを気づかせつつ、池ノ内隼人を諦めてもらおう。 幼馴染だけど、絶対に負けたくない。 ましてや池ノ内隼人と付き合えるなんて思っていないけれど、私の不意に出た気持ちはもう止まることはない。
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