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「隼人―。俺さ、E組の子に可愛い子みつけた。今回はがちだ。これって一目惚れか」
昼休み。
いつものように俺の席の前に座って弁当を広げながら龍二が話す。
「お前はさ、いつもがちだの本気だの言っといてさ、結局違ったりすんじゃん。」
いつものことだと軽く否定し、母親が朝から気合いれて作ってくれる弁当に食いつく。
「違うんだって。いつもはこんな感じじゃない。今回は矢で心臓を射されたみたいでさ。今までにない経験だ。この感じ、伝わらないか」
そういうと大げさに心の状態を体で表現しだす。
「はいはい。分かったから早く飯食べろよ。俺が食べても良いのか?」
痛々しい親友の姿を一瞬も見ずに食事を催促する。
「なあ、お前って感情持ってんのかよ。常に冷めてんな。」
しょげた小さい子どもみたいに唇をとがらせながら箸を握る。
「あるよ。一応人並みにな。でもまず女嫌いだし。俺バスケと男友達にしか興味湧かない。」
言い返してみるものの、龍二は聞いていなかった。
午後の授業も終わりを向かえ、兄貴の号令でみんな解散していく。
春休み明けなのにがっつり授業があった。
体力的にどうかなって感じがするほど勉強させられた気がする。
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