5/17
前へ
/352ページ
次へ
「隼人―。俺さ、E組の子に可愛い子みつけた。今回はがちだ。これって一目惚れか」 昼休み。 いつものように俺の席の前に座って弁当を広げながら龍二が話す。 「お前はさ、いつもがちだの本気だの言っといてさ、結局違ったりすんじゃん。」 いつものことだと軽く否定し、母親が朝から気合いれて作ってくれる弁当に食いつく。 「違うんだって。いつもはこんな感じじゃない。今回は矢で心臓を射されたみたいでさ。今までにない経験だ。この感じ、伝わらないか」 そういうと大げさに心の状態を体で表現しだす。 「はいはい。分かったから早く飯食べろよ。俺が食べても良いのか?」 痛々しい親友の姿を一瞬も見ずに食事を催促する。 「なあ、お前って感情持ってんのかよ。常に冷めてんな。」 しょげた小さい子どもみたいに唇をとがらせながら箸を握る。 「あるよ。一応人並みにな。でもまず女嫌いだし。俺バスケと男友達にしか興味湧かない。」 言い返してみるものの、龍二は聞いていなかった。 午後の授業も終わりを向かえ、兄貴の号令でみんな解散していく。 春休み明けなのにがっつり授業があった。 体力的にどうかなって感じがするほど勉強させられた気がする。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加