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「新菜ちゃん、わざわざ終業式にそんなサプライズを先生たちが仕掛ける必要も余裕もないと思うよ」
「え、あ、そっか」
大方思いつきで言ったのでしょう、あっさりと新菜ちゃんは自分の発言を取り下げました。
「じゃあなんだろ~ねえ。その、グリーンなんとかとか」
私も新菜ちゃんほどお気楽ではありませんが、確かにあれだけの説明では少なくとも私の頭では意味がわかりません。
「ねえ、新菜ちゃん」
「なあに?」
きょとんとした顔で小首を傾げる新菜ちゃん。
つられる様にふわふわな長い茶色の髪が揺れるのをみると、この子の容姿の可愛いらしさを認めざるを得ません。
「もし、さっきの話が本当だったらどうする?」
私の質問の仕方が悪かったのでしょうか、新菜ちゃんは目をまん丸にして、えっ、とちいさな驚きを見せました。
「本当って、どういうこと?」
「本当にここが死後の世界?とやらで、小町さんって人が言っていたことが本当だとしたら」
「だとしたら…」
鸚鵡(オウム)返しのような会話がここでぷつりと切れました。
「現実的にはありえないけれど、もし事実だと仮定したとしたら?」
私の言葉に、彼女の表情は先程までの雰囲気からは考えられない程の真剣な顔つきになります。
「…冗談抜きで、凄く大変なことに巻き込まれたんだと思う」
その切り替えの早い所、好きなんだよね。
「そうだね。それを最悪のケースと仮定して、今の小休憩の時間を使って話を整理してみない?」
「賛成。杞憂に終わるといいけどねえ~」
あっ、もしかしたら小町さんは本当はその為にこの時間を与えてくれたのかも。
確かに胡散臭い話だけれど、私達に与えられたのはその情報だけなのだから信じざるを得ない訳ですしね。
「まず話の流れからして、あたしたちは半強制的にオーディションを受けさせられる、んだよね?揚羽ちゃん」
「うん」
半強制的、という表現を用いたのはきっと先程のシルクハットのお兄さんを見たからでしょう。
縁の無い世界なので断定は出来ませんが、あの拳銃、レプリカやおもちゃには到底見えませんでした。
なぜなら、生まれて始めて、〝殺気〟というものを感じたのですから。
「ねえ、君たち」
「わっ!」
突然知らない人に話し掛けられて、二人で思わず変な声をあげてしまいました。
「その話、僕も混ぜてくれない?」
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