DIRECTORS

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――気がつくと、そこには異様な光景が広がっていた。 何が異様かっていうと、色々と異様なもんだから、頭ん中の整理も兼ねて一つずつ説明して行こうと思う。 まず、俺は気を失っていた。 今まで〝気を失う〟っつう経験が無かったからどんなもんかと思ったが、普通に寝ていただけみたいな感じ。正直期待はずれだ。 「んん…何だここ…」 横からそれこそ寝起きみたいな声がした。 隣でぼりぼりと黄色に近い茶色の頭を掻きながら呑気に欠伸をしているのは、友人の優太(ユウタ)。 そう、つまりここで気絶していたのは少なくとも俺だけじゃない。 それどころか、辺りには一面俺たちと同い年ぐらいの奴らが寝そべって気を失っていた。 それが、異様な光景である一つ目の要因。 「ど、何処なんだここはあ!?」 十メートルくらい前でよろよろと立ち上がる眼鏡を掛けた奴がヒステリック気味に叫ぶ。 確かあの特徴的な緑の学ラン、隣の県のエリート高校のじゃないか?最近流行りなのかよく放送される、高校生が出演するクイズ番組で見たことがある。 ていうか、男でヒステリーな奴嫌いなんだよな、俺。 「あの子頭は良いみたいだけど友達にはなれそうにないなぁ~」 隣で優太が呟く。 奇遇だな、俺もそう思ってた所だ。 「はっ、マジかよ携帯つながんねぇし!」 続けて今度は後方の方からやたらとデカい声がする。 しかしその戯けた感じの喋り口調に些か周りの空気は解れたようで、意識を取り戻した若者達はそれぞれ思い思いに今の心情を口走り始める。 「うわー本当に圏外だ」 「つぅかまじここ何処?」 意外にもその声色は、先ほどのヒステリーの様に怒りや恐怖を彷彿させるものではなく、興味や好奇心からといったものである様に感じた。 そして、先ほどまで静かだったこの空間は忽ちにざわめきで満たされたのであった。 「にしてもあっくん、キミは相変わらずクールだねえ」 「お前だって動じて無いじゃねえかよ」 ははは、と笑いながら自分の髪をくしゃりと軽く潰す優太を横目で見ながら、改めて周囲を見渡してみる。 さて、そろそろ異質と感じたもう一つの要因について触れてみようか。
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