DIRECTORS

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ハーフアップにさせた小豆色の長い髪を鬱陶しそうに耳にかけながら、少女は仕方ないわね、と続ける。 「…性よ」 「ん、セイ?」 「名字のこと」 不機嫌そうな顔を思いっきり浮かべつつも、彼女はあっさりと教えてくれた。 なんだ、意外にいい奴じゃねえか。 「名字をここでは極力名乗ってはいけないんですって」 「…何故だ?制限する意味が分からない」 「あ、あたしにそんなこと言われても困るわ!」 そりゃそうか。 「まぁとにかくありがとね。助かったよ」 「…ほら、また聞き逃すわよ」 優太のナイスフォローのお陰で彼女は静かになり、俺達も再び画面に向き直ることにした。 こういう時優太みたいな女受けの良い顔が少しだけ羨ましくも感じるね。 《名字を名乗ってはいけない理由は何れ分かります。では順を追って説明しましょう》 やっと本題か、長い前置きだったな。 なんとなくだが画面越しでも小町が先ほどよりも興奮しているのが分かる。 《皆さんは、〝死後の世界〟というものをご存知ですか?》 死後の世界?悪いが知らんな。 《いえ、質問を変えましょう。人が死んだら魂は何処へ行くのか、考えたことはありますか?》 「新手の宗教の勧誘か?」 「あっくん…もうちょっと素直に聴いてあげなよ…」 《生前の行い次第で天国へ昇ったり地獄に落とされたり。貴方たちが住んでいたのは日本ですから、極楽浄土へと考える人も居るでしょう》 っていうか最近の若者で何かの宗教を本気で信仰している奴なんて少ないと思うのだが。 《しかし残念ながらこの世にそんなものは存在しません》 …無いのかよ。 思わずツッコミをいれてしまいそうになるが、 「無いんかい!」 …優太が代わりにしてくれるのだ。 《 ただ、私たち全ての魂は 〝舞台(ステージ)〟 と呼ばれる空間、すなわち現世と 〝舞台裏(グリーンルーム)〟 と呼ばれる空間、すなわち死後の世界 この二つの世界を行き来します》 頓狂かつディープな話に俺達がついていけるはずも無く辺りは騒然とした。 《 信じられないって顔してますね。信じられなくてもいいです、ただ今は騙されたと思って聴いて下さい。 私の仕事は皆さんにこの話を聴いてもらうことなのですから》 咳払いを一つしてから小町は平然と続ける。 最近の宗教の勧誘は口が随分と達者なんだな。
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