第一章 春坂深紅

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「ただいま」 そう言って事務所のドアを開けた でも誰一人いなかった 「なんだ 響ちゃんいないんだ」 私は自分の机に座って、横を向いて外を見た 夏と秋の境目だが六時半でも少しは明るい 沈みそうな太陽を眺めながらさっきの夕暮の表情を思い出していた 「そろそろ…だよね」 と呟き、机に突っ伏した 自分でも聞こえないくらいの声で 「縛りすぎだよ…」 と半分笑って机に涙を落とす 忘れ物を取りに来た夕暮が側にいたことにも気付かなくて
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