第一章 春坂深紅

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「とりあえず中に入って?」 「あっありがとうございます。」 竹中さんの家は期待を裏切らなかった。清潔に保たれた玄関には靴が一足も置かれておらず、人が住んでいる雰囲気ではなかった。 そんなことを考えていると 「はぁ…どうしよう、手かがりなしだったらお父さんに怒られちゃう…。」 「お父さん?」 「そうなんです。うちの父親厳しくて…前にお姉ちゃんが結婚したいって言ったら、カンカンに怒って…」 「そうなんですか。」 「今回は2ヶ月も帰って来てないから本当に怒ってて…手が付けられないんです。」 「へぇ…」 すると、聡子さんが振り返って 「いやー昨日帰って来たから冷蔵庫に何にもなくてさー、お菓子でも出せればいいんだけどね。」 「いえ、お気遣いなく…。」 そう言いつつも聡子さんはいい香りのする紅茶を出してくれた。 「一人暮らしだからこんな大きな家じゃなくてもいいんだけどね。」 「えっ!?一人暮らし?」 「うん。そうだよ。」 「弟さんは?」
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