第一章 春坂深紅

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「ちょっと待って…」 「えっ…?」 「聡子さん、今2ヶ月前に弟さんは出て行ったって言いました?」 「えぇ。」 「お姉さんはこの家に遊びに来たことは?」 「何度もありますよ。」 「深紅さん、お姉さんはお父さんに結婚を反対されたんですよね?」 「はい…。」 「聡子さんっ、弟さんの名前、何でしたっけ?」 「ソウヤだけど…聡子の聡に也。」 「それだっ!」 「えっ!?」 「聡子さん、弟さんに連絡を!!今どこにいるか聞いて下さい!もちろん私たちのことは内緒で!!」 「あっ、はい。」 「どういうことですか?」 「お姉さんが彼女なんですよ!弟さんの!」 「えぇっ!?」 「つまり、2人は結婚したかったんだけれども父親に反対された。だから2ヶ月前に駆け落ちしたんです。」 「つながりました!スピーカー、ONにします! 『もしもし?聡也?今どこにいるの!?』」 『姉ちゃん?いきなりなんだよ。今は彼女と一緒だけど…急用?』 『えっと…そう!急用なの!で、今どこ!?』 『何だよ、慌てて。俺は今、彼女と海に行くために側の駅まで来たけど?』 『駅?』 『そう、 "1番線から各駅停車、赤銅寺行き、発車致します。閉まるドアにご注意下さい。"』 「今の聞いた!?」 私は小声で振り向いて、そう言った聡子さんに頷いた。
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