第一章 春坂深紅

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「おそらく家出と結婚の関係を気付かせないためでしょう。2ヶ月前に会いに行ったとなれば彼氏とは思わないでしょうから。 名前のちゃん付けも同じ理由です。男と思わせないため。 つまり、あの手紙に意味はないんです。」 私と深紅さんはなるほど、と納得した。 そして、響ちゃんは続けた。 「でも藍深さんは気付いて欲しかった。だから聡ちゃんと書いた。きっと聡子さんに繋がると信じて。思ったより気付くのが遅かったみたいですけど。」 そう響ちゃんが言ったとき藍深さんが少し困った顔をした。 その表情をみて、深紅さんはペロ、と舌を出してみせた。 「お父さんに認めてもらいたい、でも普通に言うだけじゃダメだから家出という形をとったんですよ。」
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