1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
2人の間で喧嘩口調のやり取りが始まるが、俺は密告のことが気になった。
デタラメな番号が書いてあるのかと思っていたが、そうではなかったのか。
「松本、相手って誰だったんだ?」
「いや、わからないよ。ずっと無言だったんだ。
俺が『斉藤明が日直サボったよ』って言ったら、切れちまった」
「やだ、なんか気味悪いな」
香奈が顔をしかめる。
人の彼女だけど、その本気で怖がってる表情が可愛いくて、安心させようと優しい声を出す。
「密告の募集書いた人と、電話に出た人は関係ないのかもしれないよ。きっといたずら電話だと思って切ったんだよ」
「あっ、そうだよね。本当に自分の連絡先書くわけないもんね。」
「うーん。やっぱりいたずらかぁ」
安堵の溜息を零す香奈とは反対に、さゆりは残念そうにうなだれた。
面白いおもちゃを失くした子供みたいだ。
「密告を受ける側は何の利益もないだろう。儲けがないのに、バイト代払ってたら大赤字だよ。」
来週になれば、密告バイトの話題はあきられているだろう。
俺はのん気にそんなことを考えていた。
これから、どんな恐ろしい出来事に巻き込まれていくかも知らないで...
最初のコメントを投稿しよう!