Ⅸ 主人と犬

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黒時は、戸惑った表情をしてまた、さっきのような表情だけの笑顔を見せた。 僕は……何も考えなくて良い。 考える事に疲れた。 今も呟いている三樹を背後に七夕は黒時に耳打ちした。 黒時は、ソッ と頷くと三樹を見据える。 今は壁にもたれ掛かり今にも倒れそうだ。 『冴縞くん。五月蝿いよ。主は君に静かにすることをおのぞみだ。』 黒時が言った瞬間ピタリ と三樹と奈々の声が止んだ。 同時に殺気に満ちた目で七夕を睨みつける。 黒時は、無表情で七夕から離れて三樹に近づいた。 綺麗な瞳からは透明な涙が垂れていた。 黒時は、何も言わず三樹を見据える。 『………。』 君に贈る言葉は…… ご め ん な さ い 。 貴方との約束はきっと僕が引き金となり破られるでしょう。 だからせめてもの謝罪。 守らせもしない約束をしてごめんなさい。 貴方は、精神の変化から行動に移す。 今僕は君に…君も傷つけていることでしょう。 まぁ、今の俺には関係ありませんが。 .
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