Ⅸ 主人と犬

15/18
3556人が本棚に入れています
本棚に追加
/331ページ
カタカタカタ かいと がパソコンに再び目を移すと検索欄に‘神崎グループ’と押していく。 最後にエンターキーを押すと素早く画面にアップされている情報。 かいと はジッ と画面を見つめた。 そこには小さいが家族の幸せそうな写真が載せられていた。 優しそうな女性に温かい雰囲気を纏った男性。 そして、二人の少年が写っていた。 一人はブスッ とした顔の少年で片手にはもう一人の少年の手を握っていた。 もう一人の少年は無邪気に笑っていて少年の手をギュッ としっかり握られていた。 二人とも幼さが顔に出ていて微笑ましい光景だった。 次にかいと は違う写真を探す。 と、目に入った写真に手が止まった。 優しそうに写っていた女性は一人の少年を睨み。 睨まれた少年は無表情で かいと を見つめていた。 もう一人いた少年は悲しそうな顔を浮かべて睨まれている少年を横目でチラリ と見ていた。 此処でかいと は画面から目を放した。 睨まれている少年が黒時だと見て直ぐにわかった。 今の黒時と、どことなく面影があったからだ。 『昔の写真ってパソコンに移すと意外に綺麗に写るんですね。』 後ろからの声に肩が跳ねた。 黒時は、気にして無いのかまた呟く様に口を開いた。 『父が亡くなってからでした。…………母が僕を怨みだしたのは。』 『本当は知っていたんです。母は僕を愛してはいないと。』 かいと は言葉を失った。 写真の女性を見て否定は出来なかったからだ。 .
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!