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『当たり前だと思いますけどね。』
最後にボソッ と呟いた黒時は窓に視線を移した。
空は曇っていてあまり良い天気ではない。
『雨が降ったら水が溜まる。溜まった水は川や海に流れて行く。当たり前の出来事が当たり前ではない年頃の僕は……』
欝すらと浮かぶ悲しそうな瞳は瞬き一つで 無 になった。
それをなんだか かいと にとっては寂しく感じた。
無言で見つめたパソコンにあるものが写って光っていた。
黒時の涙だ。
涙はゆっくりと黒時の頬を伝った。
本人は気づいていないのか相変わらず無表情だ。
それでも少し かいと は安心した。
黒時の感情は欠落していなかった。
悲しみも
苦しみも
懐かしさも
かいと は黒時の事は何もわからない。
人には人の感情も心も知ることは出来ないから。
だから、黒時の悲しみが…心が少し分かって嬉しくも悲しくもあった。
人間って複雑だな…。
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