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その日、私が見上げた夜空にはまんまるで大きな満月が浮かんでいた。
「でっけえ月だな」
隣に座る将也が話しかける。
「ほんとだね、明るいぐらい」
黄金色に煌めく満月を見つめていると、2年前に同じ場所から見上げた今日のような月が彷彿として思い出される。
将也も思い出したのだろうか。
黙って月を見つめている。
私も同じように月を見つめると、懐かしい笑顔が頭をよぎった。
本当は、もう一人いるはずだった。
私のぽっかりと空いた左側を埋める人物が。
3人で2年前に見上げた月。
懐かしくも悲しい。
「由香」
「なに?」
「墓参り、明日行くか」
将也の唐突な提案に私は体ごと右を向く。
「どうして急に?」
「急じゃねえよ、前から思ってた」
「私は聞いてない」
「じゃあ、行こう、明日」
将也がなぜ唐突にこんなことを提案した理由は分かってる。
受け止めなきゃいけない。
もう、嫌というほど逃げてきた。
「…分かった、行くよ」
「じゃあ、また後でメールしとくわ」
黙って頷くと、将也はニカッと笑った。
「明日は二人で耽ろうぜ」
「そうだね…」
明日のことを思うと、嫌でも色んな想いが心を掠める。
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