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遠くで人の声がする。
男の声…1人ではない数人の男の声。
夢?
それにしてはリアルな声、ぼやけた視界がはっきりしてきた。
周りを取り囲む男たち…
互いの名前を呼ぶ男たち、「総司」「土方さん」「佐之助」「新八っあん」「藤堂」。
聞いた事がある名前、唯はさっきまでお客様にその人物たちの話を案内していたのだ。
(太秦映画村は今日のコースには入ってへんかったよなぁ…?)
(コース変更したん?)
(???ってかなんでうち布団に寝てるんやろ?)
なとど唯は考えていた。
「○☆◇△?」
(ヅラとメイクにしてもリアルやわ~)
などと思いながらボーっと彼らをみていると、
「…△◇○☆?!」
「おい!!」
その声にハッとする唯。
眉間にシワを寄せた男が睨んでいた。
「お前何者だ!可笑しな服着やがって、なんであんなとこにいたんだよ!?」
「土方さんってば、そんな怖い顔して聞いたらお嬢さんも怖がっちゃいますよ~」
柔らかく優しい笑顔の青年が間に入る。
(土方って土方歳三と同じ名字…ってことは映画の撮影で新撰組の役者さんたちなんかな?)
と思い、
「リアルなメイクですね~映画ですか?もしくはドラマ?」と唯は尋ねた。
「エイガ?…なんだそれは?」
男たちは首を横にひねり、なんの事だか分からない…といった感じだった。
「あ!」
急に大きな声をあげた唯に驚いたのか、男たちは一斉に刀に手をかけた。
「お客様!そうや、うち壬生寺案内しててそしたらお客様同士が喧嘩してもうて止めにはいってん!!そしたら捲き込まれて突き飛ばされて…井戸に落ちて…って今何時!?
集合時間!!ってかお客様は?」
唯が尋ねると、土方と呼ばれていた男が
「あぁ?お前さっきから何言ってやがる。壬生寺にいたのはお前だけだよ、他にはだれもいねぇよ。ちなみに今は暮れ六つだ。」
「暮れ六つって江戸時代と違うんやから(笑)」
「あぁ?江戸?ここは京だよ。いい加減こっちの質問に答えてもらおうか!!嬢ちゃん!!」
この雰囲気…とても撮影だとは唯は思えないくなっていた。
「すみません、ちょっと外出してもらえませんか?
壬生寺に行きたいんです。」
頭痛がする頭を押さえながら唯が布団から出ようとすると土方と呼ばれる男がますます眉間にシワをよせ今にも掴みかからんばかりの勢いだ。
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