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そこは唯の知る四条通りではなかった。
アスファルトの道路ではないし、車も走ってない。ましてや、着物をきた人たちが往来していて珍しいものを見るように唯の事を見ている人もいた。
「セットにしては本域すぎるわ…」
周りをみても唯が知る建物はなかった。
壬生寺に入る路地と四条通りの角にはスーパーがあるがそれもないし自動販売機もなかった。
「なんなん、どこなんここ…」
夕方ということもあり辺りは薄暗くなっていた。
男たちが唯に追い付き肩に手をおくと細い肩がビクッと反応した。
「嬢ちゃん、とりあえず八木邸に戻ってもらう。話はそれからだ。」
唯は黙ってついていった。
(…街灯がない…)
現代では街灯がないなんてありえないのだ。
5分ほどで八木邸に戻ってきた。
唯の足が汚れているのに気づいた男たちは女中に声をかけた。
唯は不安でたまらなくなり最初に唯をかばおうとした優しい笑顔の青年に尋ねた。
「ここは八木邸ですよね?」
青年はニッコリ微笑んで、「そうですよ、僕たち新撰組がお世話になっているお屋敷です。よくご存知ですね。」
「新撰組?」
(新撰組って幕末の京都で人斬り集団で恐れられたアノ新撰組?)
唯の頭の中は混乱していた。頭がズキズキ痛む。
「さ、足もきれいになりましたし中へどうぞ。」
青年は笑顔で促した。
「土方さん、入りますよ。」
青年は障子越しに声をかけ開けると仁王立ちで眉間にシワを寄せた男が立っていた。
さきほど、唯に質問をしていた男だ。
土方…と呼ばれていた…。
唯が知っている新撰組の土方といえば、鬼副長で組内でも恐れられた男。
もう訳が分からない。
頭痛はますますひどくなった。
「座れ。」
従うしかない…
唯は黙って座った。
正面に土方、その左右に笑顔の青年、さきほどの男前とあとの2人が座った。
「じゃあ、聞かせてもらおうか…嬢ちゃん。」
正面から声がしたが、唯はひどい頭痛と今の状況が分からずうつ向いたままだった。
「お前…何者だ?なんで壬生寺にいたんだ?それとその服…西洋のものだよな…」
「ちょっと土方さん、質問攻めはかわいそうですよ、彼女震えてますよ。」
笑顔の青年は唯に向かって
「大丈夫ですよ、ゆっくりでいいですからね。」
と微笑む。
「総司…お前は優しすぎるんだよ。この女がきちんと話しないで飛び出したから悪りぃんだろうがよ。」
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