ようこそ『かがみや』へ

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「あ、ハイその、私のチカラは【悪意を感じるチカラ】なんです。それで……」 少女が自らの確証の由縁を告げた。 なんの戸惑いもなくすぐさま答えた辺り、かなり確信をもっているらしい。 「『チカラ』……そうか君は彼の友達だったね……うんまあ、それなりに信頼性はあるか。手がかりが無いのは残念だけど」 鑑もそれをあっさり了承したのだった。 --『チカラ』-- 彼女らの世界では、なにかしらの『チカラ』を持つ者が存在する……というのが常識である。 未だ、そのメカニズムは詳しく解明されていないが、第五次氷河期の際に、人類の生存本能が急激に活性化したため獲得した能力……と考えられている。 その内容は多岐に渡り、【炎を飛ばすチカラ】というなんともポピュラーかつ物騒なものから、【ものを綺麗にするチカラ】といった、なんとも日常生活に便利なもの……果ては【靴下を手に入れるチカラ】などという、もはや何がしたいのか分からないものまで実に千差万別である。 「でも警察も能理もとりあってくれなくて……」 しかし、『チカラ』がありふれているからといって、それを持つ者が好き放題できるわけではない。 それら『チカラある者』……いわゆる能力者達は、その能力と共に戸籍へ登録され、政府による管理を受けるからだ。 ある一定の危険性があるものを、政府の許可、もしくは正当な理由なしに発動した場合、違法となり、何かしら『チカラ』を使ったと思われる事件が発生すると、戸籍からそれらしい人物を割り出し捜査、確保する。 ……そして、それら全てを実行、処理する為の専門の機関が【能力管理局】……通称、【能理】である。 まあ、他にもいろいろ『チカラ』に関する仕事はあるのだが、やってる事はほとんど警察と同じようなものだと考えていいだろう。 悲しいかな、事件が起こらないと行動しない、できない。といったところまで警察と同じであるようだが。 「それで藁にもすがる気持ちでこの店に来たと」 「はい……ケンに相談したらここがいいって……」 以上が彼女の、こんな胡散臭い男に頼らざるを得なくなった経緯であるらしい。
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