『かがみや』始動

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「一人の時は、なるべくそれを見るようにするんだ。…こう顔の高さでね」 店主は自分の手を顔の高さへもってきて実演する。 「すると後ろが確認できるだろ? そして、後ろからも、見えやすくすると、相手を牽制する事ができる。そういう連中は心理的に、映りこむ事を避けるだろうし、接近を察知されやすくなるからね。」 「な、なる程…」 案外しっかりした理由で感心しているようだ。 「そしてさらに! それはただのコンパクトじゃない。特別製なんだ」 それはそれは自慢げに。 「特別製?」 「そう、そいつは知り合いが暇潰しに作って寄越した物なんだけど……なんと、発信機が付いてるんだ」 「…はぁ」 店主は、またしても懐から、なにかを取り出した。 見ればそれは、古めかしいデザインの…そう、トランシーバーによく似ている。 「ほら、ここに相対位置情報が表示されてて、こっちが…ほら、今は反応が店と重なってる」 なる程、確かに顔を上げて、彼の手元の機械に目をやれば、レーダーのような画面に、緑の点が映っている。 「その鏡を持ってる限り、だいたいの位置がすぐ分かるわけだ。どうだいすごいだろぅ?」 「ええ、まあ…」 なんでそんなに誇らしげなのか。 自分が作ったわけでもないのに。 「んで、コンパクトなら、女の子が持ってても、なんら不思議はないと。とにかくそいつを肌身離さず持っておきなさい」 「あ、ありがとうございます…」 「バッテリーが切れそうになったら、そこのランプがつくから、その時にまたここへ来なさい。その頃には丁度、準備ができてるだろうし」 「わ、分かりました…!」 具体的な対策らしき物を手に入れ、どことなしか、元気を取り戻したようである。 「因みに、ラミパス♪ラミパス♪ラリルレロ♪とかなんとか唱えても変身機能はついてないから」 「はいぃ?」 「ま、なるべく一人にならない事だね。ケンイチ君にでも送り迎えしてもらいな」 「あ、はい。それは相談した時から、なるべくしてくれてるんですけど…」 「おやおや」 「でもやっぱりずっと一緒っていうのも限界があるし…」 「いやぁ…彼ならそれくらい平気でしてくれるハズだけどねぇ…」
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