かがみや営業日記

ようこそ『かがみや』へ

ひどく薄暗い部屋があった。

とても壁一枚隔てた外が、まだ昼間の丁度ど真ん中だとは思えない程に。

だが中を見渡せば、この薄暗さも頷ける。

なぜならこの部屋の光源といったら、天井の真ん中で弱々しく光る照明が一つと、入り口を挟んだ窓とおぼしき場所から差しこむ自然光しか無いからだ。

窓とおぼしき……などと言ったのには理由がある。

それもこれも、入り口の左右にはかなり年季の入ったカーテンしか見えず、その向こう側から光が届いているだけなのである。

まあ、カーテンの向こうは大抵、窓と相場は決まっているので、窓とおぼしき…という表現に至ったわけだ。

つまり、この『部屋』としてはなかなかに広い空間の闇を全て取っ払うには、分厚いカーテンごしの光と、今にも消えそうな控えめな照明だけでは、少々力が足りなさ過ぎた。

実際、入り口付近の明るさはなんとか保たれてはいても、その奥に届く光は僅かで、よーく目を凝らせば、カウンターのような場所に一人の人物が突っ伏しているのがうっすら見えるか見えないか……といった程度である。

その人物も
寝ているのか死んでいるのか……とにかく動かない。

しかし、先程からこの空間を部屋部屋と呼んではいるが、ここはどうやら店であるらしい。

その証拠に、部屋の棚や壁一面に、ある商品らしきモノがずらりと並べられている。

さしずめ、奥の男はここの店主といったところか。

店主にしてみれば、この薄暗さも、都合よく解釈して、雰囲気のある店……などと思っているのかもしれないが、ハッキリ言って、なんとも陰気な店である。

そしてこの時、その陰気な店のドアが、カランカランと小気味よい音をたて客の来店を知らせた。