『かがみや』始動

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その時、彼女の手元から何かが飛び出した。 真っ直ぐに撃ち出された『ソレ』は、ヒュンッと空を切り、彼女の豊かな栗毛を撫でるかのように掠めたかと思うと、黒い肩へめがけ、一直線に突撃した。 「う、ぐッ……!?」 予想外の反撃を受け、驚愕の表情を浮かべた男は、身じろぎ一つを残し、ドサリとその場へ倒れ伏した。 襲撃者は倒れた。 少女は傷一つ無い。 だが、この状況を最も理解していないのも彼女だった。 あまりに突然の出来事で、何がなんだか分からない。 一体、何が起きたのか? しかし、真っ白になった彼女の脳裏に、たった一つ浮かんだのは、彼の声 『走れ! とにかく走れ!』 「……!!」 彼女は走った。 全力で、わけもわからず、ただひたすらに走った。 あとほんの数メートルの距離が、万里の道のように感じたが、それでも走った。 少年の言葉を信じて…… 扉が乱暴に開かれた。 「はぁ……はぁ……」 「……やあ、いらっしゃい」
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