『かがみや』始動

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―――※※※――― 消失からしばらくして、少女は再び現れた。 前回の教訓から、少女の消失後も取り乱す事なく、じっと、その場を監視していた彼らの予想通りだった。 消失と再出現は、どちらも同じ地点で行われる、という仮説が早くも証明されたのである。 状況を鑑みるに、当初想定された、ターゲットの新能力という線も、可能性は大幅に低くなった。 消失はどうやら、彼女自身によるものではなく、この地点特有の効果と推測される。 様々な要因が偶然に重なり合う事で、局地的に、能力及び機器全般の探知作用を著しく低下させる効果をもつ、いわゆる『スポット』であると判断した。 今までに、目視すら不可能となる規模の物が報告された事は無かったが、有り得ない事でもない。 現に、人間すら『チカラ』などという突飛な能力を発現させたのだから、自然の神秘を否定できようはずがないのだ。 ともかく、このポイントについては、今回の任務後に詳しく調査するとして、まずはターゲットの確保が最優先。 先程は、秘匿性の維持を旨とする彼らの性質上、機密保持の観点から、戦闘不能に陥った仲間を回収せざるを得ず、結果、ターゲットを取り逃がす事となってしまった。 そも、回収された彼こそが、今作戦において、最も適正とされ、最も重要な段階を任された人物だったのが大きかったともいえる。 その彼が失敗した以上、残された人員でターゲットを確保するにあたり、同じ方法での成功は望めなかった。 故に、彼らはこうして、人員の再配置を行い、少女の出現を待ったのだ。 もう失敗は許されない。 ……先程の失態が既に任務失敗のグレーゾーンではあるが、奇跡的かつ幸いな事に、ターゲットが悲鳴をあげなかったため、彼女以外への発覚は無かった。 この際、目標の身柄を確保しさえすれば、任務達成とする事にしたのだ。 彼らは、決行にこだわった。 今日を逃せばもう機会はない。 今日、彼女を捕まえなくては。 迅速に、そして無傷でターゲットを捕獲するために、彼らは簡単な策を用意した。 影は彼女を囲んで配置されている。 しかし、その網にはわざと穴を開けられていた。 少女が逃げやすいように……。 そして、漁がはじまる。
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