その男『かがみや』につき

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「隣を歩いて帰るのはいい、だが、途中で別れた後も、ターゲットが帰宅するまでウロチョロと……毎日だぞ? 最初からコソコソしている日もあったくらいだ、あれが本当に噂の『イージス』かと我が目を疑った」 「健気じゃないですか」 「あれは立派に、ストーカー規制法第二条に抵触している。何度、公訴してやろうと思ったか……しかし被害者からの告訴がなければ何もできん」 ストーカーに対する規制法案は、親告罪である。 「いや、被害届はだしたらしいですよ? もっとも、あんたらの、ですがね」 「なんだと!?」 黒服の男が素っ頓狂な声を出す。 「まあ、受け取って貰えなかったみたいですね、どうやら」 「そんな報告は来ていない!」 「ええっ? てっきり貴方達が圧力をかけたのかと……じゃあ職員の怠慢ですかね」 「ぐっ……どちらも無いとは言い切れんが……上にせよ下にせよ……それがあればどれだけッ……!」 余計な手出しをした幹部か、はたまた、ただの駄目職員かは分からないが、今回ばかりは感謝すべきだろう。 でなければ、少女を見守る青年は、これ幸いとばかりに誤認逮捕されるところだったのだから。 それも犯人達によって。 「ぐぅ……報告感謝する……」 「いえいえ、どうも。改善お願いします」 「ああ、任せて貰おう」 両者の間の雰囲気が、ほんの一瞬だけ、和らいだ気がした。 しかしそれも束の間。 「さて、後は我々に任せて、貴様には気兼ねなく逝って貰おう」 「おやおや、分かり合えたと思ったんですがね」 再び銃を構える男達。
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