鏡と偽善と兄弟と

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―――――――――― 少女のたどり着いた場所は、まだ昼前だというにも関わらず、祭りの如く賑わっていた。 そして、その普段とは違う、ある種異常な賑わいの中心には、巨大な黄色い霊峰が鎮座している。 その布の山肌を、爽やかな風に棚引かせながら、雑技団のテントは多くの登頂者達を受け入れていくのだ。 かくいう少女も、今日はその登山客の一人。 ただ、彼女が他の客と違っていたのは、期待という名の菓子袋に、小さな穴を開けてしまってる事だ。 母親に手を引かれた男の子が、ブルストンの腸詰めを頬張ると、特大の笑顔を弾けさせる。 過酷な登山はまだ一合目すら過ぎていないというのに、彼の菓子袋はすでにパンパンのようだ。 そんな微笑ましい光景に、少女はやや笑顔を取り戻すが、だからこそ、その微笑みの隅には僅かな寂寥感をも浮かぶのだった。 「――じ―るっ!」 「い――だか――な?」 トゥーンがテントの入り口に近づいてきた時だった、喧騒に紛れてもおかしくないその声を、彼女がの耳が拾ったのは。 「いじわるいじわる! おじさんのいじわるっ!」 「いやいや、だからなボウズ? 何度も言ってるじゃないか。いじわるじゃなくて、チケットがないと入れないんだってば」 「いやだ! みるんだもん! お兄ちゃんたち、みるんだもん!」 「まいったなあ……誰の弟だよ……」 テントの入り口で、客とピエロが券を取り替えている少し脇。 腕を振るって駄々をこねる男の子の前で、髭面の巨漢が眉を下げ、自らのつるりとした頭を撫でていた。 「あの……どうされたんですか?」 「ん? お嬢ちゃんは、ボウズのお姉さんかい?」 「え!? いや違います! す、すみません……」 確かにトゥーンは二人共に面識はない。 だのに声を掛けたのは、彼女が人一倍のお人好しだからだ。 もう、こういう手合いに首を突っ込んだのは何度目か。 それは、人一倍寂しがりな彼女が無意識に人との関わりを求めるが故かもしれないが。
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