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顔を出した太陽が新たな始まりを告げ、路地へ乱雑に詰まれた木箱の影で、野良猫があくびをする。
街の住人達も、みな思い思いの活動を始め、主婦が桶を片手に井戸へ向かう途中で、鈍色の鎧を着込んだ男とすれ違い、道を行く男の足元で、露天商が珍妙な品の並べた、極彩色の敷き布の隣では、槍のような長物を足で掴んだ、儚く、消え入りそうな国家の象徴が、まだ一度も踏まれていない奇跡を誇示しようと、砂でできたその羽を大きく広げていた。
そんな、日常の朝。
道なりに並んだ、大小様々な家々に挟まれた路地から、一人の女が現れた。
深紅の髪が朝日を反射し、滑らかな髪質も相まって、さながら鮮血の如し。
切れ長の眉尻が、妖しく瞬く度に、鋭利な刃物を思わせるようで。
しかして肌は抜ける程に青白く、その対比がまた、お互いを引き立て、不気味なまでに美しさを醸し出していた。
ある種の気品すら漂う彼女はやはり、真紅の派手なドレスに身を包み、自信に溢れた足取りで、大通りを進んで行く。
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