2.再会

8/14
前へ
/26ページ
次へ
    流衣は勢いよくソファから立ち上がった。 「俺、思い出したいんです。写真に写っている楽しそうな自分を見たり、母さんから話しを聞いて、その思いはだんだん強くなりました。俺、ここには記憶を取り戻しに来たんです」 そう言った流衣の目には力強さがあった。 流衣に続きおばさんも口を開く。 「奈留ちゃん。流衣の記憶を取り戻す手伝い、してもらえないかしら?」 私は何も考えずに“はい”と返事をしていた。 いや、考えていないと思っているだけで、無意識のうちに考えていたのかもしれない。 私を思い出してほしい、と。 「ありがとう、奈留ちゃん」 おばさんは私の両手を自分の両手で包み込むように握りしめ、満面の笑みで私を見た。 流衣の顔にも笑みが浮かんでいる。 「それじゃあ、そろそろ帰ろうかしら」 おばさんは私の手を離し、羽織ってきた上着と鞄を持つ。 流衣も上着を着ようとするが、それはおばさんに止められた。 「流衣はもう少しここにいたら?いいかしら?」 おばさんの問いにはお母さんが“もちろん”と笑顔で答えた。 「じゃあ、私は帰るわね。遅くならないうちに帰ってきなさいね」 おばさんはそう言って玄関の方へ歩いて行った。    
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加