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女の子達がいなくなった後、“流衣くんって女慣れしてるでしょ”と言った沙和の言葉に流衣はにこっと笑っただけだった。
考えてみれば確かにそうかもしれない。
昨日話した時も、私は顔赤くした気がする。
なんでそんな恥ずかしい台詞をさらっと言えるんだろう。
まさか!
私の知らないうちに、遊び人になっちゃってるとか!?
頭の中に浮かんできた言葉を否定するように、私は頭を横に振った。
「何してるの?奈留」
はっと顔を上げると、沙和の視線が痛い。
「な、なんでもないよ!」
沙和は“ふーん”とまだ変なものを見るような目で私を見ている。
「それより奈留。学校案内、してくれる?」
「あ、もちろん」
今度は邪魔されずにすんだ。
“ありがとう!”と嬉しそうな流衣の顔を見てると私も嬉しくなる。
まぁ、私に頼んでくれたことで既に嬉しいんだけどね。
「あ、帝~!」
突然、沙和が大声をだして頭の上で手を振った。
沙和の目線の先には、今教室に入ってきた帝の姿。
朝から大声で名前呼ばれて恥ずかしくないのだろうか。
沙和に向かって笑顔で手を振る帝を見てその考えは消えた。
そうだ。
この2人はバカップルなんだった。
帝は荷物を置いてすぐこっちに向かってきた。
そして、私と流衣を交互に見て笑顔を浮かべた。
「ちゃんと話せたんだね。よかったじゃん、奈留」
その言葉に私も笑顔を浮かべた。
「俺、白咲帝。よろしくな」
帝に続いて流衣が“よろしく”と言う。
そして沙和を見て“彼氏?”と聞いた。
すると沙和は“やっぱ分かっちゃう?”とにやけながら帝の腕を掴む。
幸せそうだなぁ。
いつか私も、流衣と――。
そんなことを考えていると、チャイムが鳴り、みんな席に着いた。
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