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「ここが実験室で隣が調理室。それからこっちが…」
昼休み。
お弁当を急いで食べた私と流衣は、学校を隅から隅まで歩き回っていた。
「この学校、結構広いんだね。覚えきれないよ」
指を指して教室の場所を教えながら説明をしている私の声に耳を傾けながら、流衣は苦笑気味に呟いた。
呟いたと言っても私には十分聞こえる音量で、一旦説明の為に開いていた口を閉じる。
「だよね。私も去年同じこと思った」
ゆっくりと廊下を歩きながら私も苦笑する。
昼休みといっても、今私達がいる場所は教室から遠く、人の姿が見えず静かだ。
時々どこかからうぐいすの鳴き声が聞こえる。
「まだ行ってない所ある?」
「んと、職員室とか行ってないよね」
教室から遠い方から回ろうと言うことで、近い職員室は後回しになった。
「職員室はたぶんわかるからいいや。もう疲れちゃったー」
流衣はんーっと両腕を上へ伸ばした。
「疲れたって、まだ10分くらいしか歩いてないよ?」
これで疲れたなんて、普段どんだけ動いていないのか疑問に思う。
「違う、疲れたのは頭。教室多すぎ。半分も覚えてないかも」
その言葉に対して“本当に?”と笑いながら言うと“冗談”と言う笑顔が返ってきた。
「俺、奈留と並んで歩くのちょっと楽しみにしてた」
“え?”と聞き返すと同時に流衣の方を向くと、流衣は既に私の方を向いて微笑んでいた。
さっきのような冗談を言った笑顔ではない。
本当に楽しみにしていてくれだんだ、と嬉しくて顔がにやける。
「私も、楽しみにしてた!」
嬉しくなってついつい言葉に力が入ってしまった。
流衣は嬉しそうに私の頭をぽんぽんと2回叩いた。
凄く優しい顔をしている流衣に、私は少し見とれてしまう。
すると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「奈留、早く行こ。授業遅れる」
流衣は私の頭から手をどけて、私に向かって微笑んでから歩き出した。
置いていかれないように、その後を追う。
なんか、流衣といるとずっとどきどきしてる。
流衣は私といて、何も思わないのかな?
なんて、覚えてもいないのに、何か感じるはずがないか。
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