2.再会

3/14
前へ
/26ページ
次へ
    「じゃ、自己紹介してな」 男子生徒が教卓のすぐ横まで来て立ち止まると、タイミングよく杉下生徒は言った。 「はい。神奈川から転校してきました、今川流衣です。よろしくお願いします」 時間が、止まった気がした。 “今川 流衣” しかも神奈川は流衣が転校していった場所だ。 「ねぇ、奈留」 沙和とは出席番号が前後のため、席も前後。 沙和は後ろを振り返って、小さな声で話しかけてきた。     「今川流衣って、あの流衣くん?」 ぼーっとしていた私は、沙和の声で我に返る。 「うん…、そうかもしれない」 私は喜びを隠せなかった。 声はいつもより高くなってるし、顔だってたぶんにやけてる。 「よかったじゃん。私にも紹介してね」 「うん」 流衣が戻ってきてくれたことが、私はただ嬉しかった。 「それじゃ今川。後ろの空いてる席に座れ」 杉下先生がそう言うと、流衣はまっすぐ席に向かう。 その時だ。 目が合った気がした。 だけど流衣は何もなかったように視線を前に戻す。 杉下先生が何か言っているが、そんなのもう頭に入ってこない。 胸が熱くなった。 これが恋なのだろうか。 私はこれからの流衣との学校生活に胸を膨らませる。 だが、同時に心配にもなった。 流衣はまだ私のこと、指輪のことを覚えているのだろうか。 何年も連絡がなかったことが、改めて私の胸に突き刺さる。 急に教室がざわつき始めた。 気づくと杉下先生はいなくなり、SHRは終わっていた。 そして、流衣の周りには人だかり。 「なんか、あれじゃ近づきにくいね」 流衣の方をぼーっと眺めていた私に、沙和はそう言った。 「…そうだね」 私は少しほっとしていたのかもしれない。 忘れていたら? そう思うと話しかけるという単純な動作さえも、行動にうつすことができなかった。    
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加